ネクタイのかっこいい結び方講座|プレーンノット・セミウィンザー・ウィンザーと、ディンプルの作り方
Gentleman’s Notes紳士の手帖 一冊目ネクタイ
人と会う前、鏡の前でネクタイを結ぶ。その数分で、その日の印象はかなり決まります。
ネクタイは顔のすぐ下にあります。向き合ったとき、相手の目に最初に入る場所です。結び目がゆがんでいる。長さが合っていない。小剣が横からのぞいている。どれも小さなことですが、相手には「準備が雑な人」として伝わります。
CROSS ROADは、スーツを軸に始まったブランドです。新シリーズ「紳士の手帖」では、品のある男を形づくる技術を、一冊ずつまとめていきます。一冊目はネクタイです。4つの結び方とディンプルの作り方を、鏡の前でそのまま使える手順でまとめました。
なぜ結び目が大事なのか|第一印象と「品」
結び目(ノット)は、ネクタイの中でいちばん小さな部分です。それでも、着る人の丁寧さがいちばん出る部分です。きれいな結び目には、次の3つがそろっています。
- 形が整っていて、襟のちょうど中心に収まっている
- 首元まできちんと上がり、シャツの第1ボタンが隠れている
- 結び目のすぐ下に、ディンプル(くぼみ)が1本入っている
高価なネクタイである必要はありません。品は値段ではなく、手間のかけ方から出ます。会う前に自分の首元を整えておく。それは、これから過ごす時間を大切に思っているという意思表示です。
まず覚えたい4つの言葉
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 大剣(だいけん) | 幅の広い側。結んだあと、前に見える部分です。 |
| 小剣(しょうけん) | 幅の狭い側。結んだあと、大剣の裏に隠れます。 |
| ノット | 結び目のこと。結び方によって大きさと形が変わります。 |
| ディンプル | 結び目のすぐ下にできるくぼみ。立体感と陰影が生まれます。 |
大剣の裏には、小剣を通すための輪(ループ、小剣通しとも呼びます)が付いていることが多いです。結び終えたら、小剣をここに通しておきます。
結ぶ前の準備と、手順の読み方
- シャツの第1ボタンまで留め、襟を立てておきます。
- 手順の「右」「左」は、すべて自分から見た向きです。鏡で見た場合は、左右が逆に映ります。
- どの結び方も、スタート時は「大剣を自分の右側、小剣を左側」に垂らします。
- 大剣側を長めに取ります。結び目が大きい結び方ほど布を使うので、さらに長めにします。
- 最初から長さがぴたりと決まることはまれです。2〜3回結び直す前提で始めて、首にかける位置を自分の目印として覚えます。
プレーンノット|最初に覚える基本の結び方
| 向いている襟 | レギュラーカラー、ボタンダウン |
|---|---|
| シーン | ビジネス、デート、休日のジャケットスタイルまで幅広く |
| 難易度 | ★☆☆(やさしい) |
| 結び目の形 | 小さめで、やや縦長。少し非対称 |
結び目が小さく、すっきり見える結び方です。厚手のネクタイやニットタイとも相性がよく、最初の1本はこれで十分です。
手順
- 大剣を右、小剣を左にして首にかけます。大剣を長めに取ります。
- 大剣を小剣の前に重ね、右から左へ交差させます。
- 大剣を小剣の後ろに回し、左から右へ戻します。
- 大剣をもう一度、前を通して右から左へ回します。結び目の前に、横向きの帯ができます。
- 大剣を、首元の輪の内側(シャツ側)から上へ通します。
- 上に出た大剣の先を、4でできた前の横帯に上から差し込み、下へ引き抜きます。
- 片手で小剣を軽く下へ引き、もう片方の手で結び目を首元まで滑らせて整えます。
よくある失敗と直し方
- 首元に隙間ができる:7で、小剣を下へ引きながら結び目を押し上げます。結び目そのものをつまんで引き上げると、形が崩れます。
- 結び目が大きく傾く:プレーンノットは少し非対称なのが自然です。極端に傾くときは、4の横帯をきつく巻きすぎていないか確認します。
- 大剣が短くなりすぎる:ほどいて1に戻り、大剣を5cmほど長く取って結び直します。
セミウィンザーノット|きちんと感のある三角形
| 向いている襟 | レギュラーカラー、セミワイドカラー |
|---|---|
| シーン | ビジネス、ディナー、会食 |
| 難易度 | ★★☆(ふつう) |
| 結び目の形 | 中くらいで、左右対称に近い三角形 |
ハーフウィンザーとも呼ばれます。プレーンノットより一回り大きく、左右がそろった三角形になります。迷ったときに選んで外さない結び方です。
手順
- 大剣を右、小剣を左にして首にかけます。プレーンノットより少し長めに取ります。
- 大剣を小剣の前に重ね、右から左へ交差させます。
- 大剣を小剣の後ろにくぐらせ、右側へ戻します。
- 大剣を持ち上げ、首元の輪に上から差し込み、右側へ引き下ろします。結び目の右側に、小さな折り返しができます。
- 大剣を、結び目の前を通して右から左へ横切らせます。前に横帯ができます。
- 大剣を、首元の輪の内側(シャツ側)から上へ通します。
- 大剣の先を、5でできた横帯に上から差し込み、下へ引き抜きます。
- 小剣を押さえながら結び目を上げ、三角形を整えます。
よくある失敗と直し方
- 三角形の片側だけが大きい:4の折り返しを強く引きすぎています。4では形をつくる程度にとどめ、最後の8で締めます。
- 結び目が大きくなりすぎる:生地が厚いネクタイは、プレーンノットに切り替えます。
- 前の横帯がねじれる:5で、大剣の表(柄のある面)が前を向いているか確認します。
ウィンザーノット|存在感のある正三角形
| 向いている襟 | ワイドカラー、カッタウェイ |
|---|---|
| シーン | 式典、フォーマルな会食、改まった場 |
| 難易度 | ★★★(むずかしい) |
| 結び目の形 | 大きく、左右対称の正三角形 |
左右の両側に折り返しを作るため、結び目が大きく、どっしりとした正三角形になります。襟の開きが狭いシャツでは結び目が窮屈に見えるので、ワイドカラーと合わせます。布を多く使うため、背の高い方や厚手のネクタイでは長さが足りなくなることがあります。
手順
- 大剣を右、小剣を左にして首にかけます。大剣はかなり長めに取ります。
- 大剣を小剣の前に重ね、右から左へ交差させます。
- 大剣を、首元の輪の内側(シャツ側)から上へ通し、前に倒して左側へ引き下ろします。左側の折り返しができます。
- 大剣を小剣の後ろに回し、右側へ出します。
- 大剣を持ち上げ、首元の輪に上から差し込み、右側へ引き下ろします。右側の折り返しができます。
- 大剣を、結び目の前を通して右から左へ横切らせます。前に横帯ができます。
- 大剣を、首元の輪の内側から上へ通します。
- 大剣の先を、6でできた横帯に上から差し込み、下へ引き抜きます。
- 小剣を押さえながら結び目を上げ、左右の折り返しが同じ大きさになるよう整えます。
よくある失敗と直し方
- 大剣が短くなる:プレーンノットより10cm以上長く取ってから始めます。
- 左右の大きさがそろわない:3と5で引く強さをそろえます。片方だけ強く引くと、三角形が傾きます。
- 襟から結び目がはみ出す:シャツの襟の開きが足りません。セミウィンザーに切り替えます。
ボーナス|ダブルノット
| 向いている襟 | レギュラーカラー、セミワイドカラー |
|---|---|
| シーン | 細身・薄手のネクタイで結び目に厚みを出したいとき。ディナーや少し華やかな場 |
| 難易度 | ★★☆(ふつう) |
| 結び目の形 | 縦長。結び目の下に、巻きがもう一段のぞく |
プレーンノットの巻きを2回にした結び方です。結び目が縦に長くなり、下にもう一段の巻きが少しのぞきます。薄手のネクタイは、プレーンノットだと結び目が小さくなりすぎることがあります。そんなときに向いています。
手順
- 大剣を右、小剣を左にして首にかけます。
- 大剣を小剣の前に重ね、右から左へ交差させます。
- 大剣を小剣の後ろに回し、右側へ戻します。
- 大剣を、前を通して右から左へ回します(1周目の横帯)。
- もう一度、大剣を小剣の後ろに回して右側へ戻します。
- 大剣を、前を通して右から左へ回します(2周目の横帯)。1周目のすぐ上に重ねます。
- 大剣を、首元の輪の内側から上へ通します。
- 大剣の先を、2周目(上側)の横帯にだけ上から差し込み、下へ引き抜きます。
- 1周目の巻きが結び目の下に少しのぞくように整えます。
よくある失敗と直し方
- 巻きが重なってごちゃつく:6で、2周目を1周目のすぐ上にまっすぐ並べます。
- 結び目が大きすぎる:厚手のネクタイには向きません。プレーンノットに戻します。
ディンプルの作り方
ディンプルは、結び目の下に入れる1本のくぼみです。立体感が出て、ネクタイの表情が締まります。作るのは、最後に締める直前です。
- 最後に大剣を横帯へ通したら、まだ強く締めずに止めます。
- 結び目のすぐ下で、大剣の中央に人差し指を当てます。
- 親指と中指で大剣の両端を軽くつまみ、人差し指の両側にひだを寄せます。
- 人差し指でくぼみを押さえたまま、もう片方の手で小剣を下へ引き、結び目を首元まで上げます。
- 結び目が上がりきったら指を抜き、くぼみが中央に1本入っているか鏡で確認します。
- ディンプルは中央に1本が基本です。
- 弔事では、ディンプルを作らないのが一般的です。
- ニットタイは、ディンプルを作らずに仕上げるのが一般的です。
長さ・小剣・幅のバランス
長さ:大剣の先がバックルに少しかかる程度
まっすぐ立ったとき、大剣の先がベルトのバックルに少しかかる位置が目安です。短すぎるとバックルが丸見えになり、幼く見えます。バックルより下まで垂れると、だらしなく見えます。合わないときは、首にかける最初の位置を調整して結び直します。
小剣は見せない
小剣が大剣より長いと、下から先がのぞきます。結び終えたら小剣を大剣裏のループに通し、横からも下からも見えないようにします。ループに収まらないほど長いときは、最初の位置を変えて結び直します。
幅:ラペルと襟に合わせる
ネクタイの幅は、ジャケットのラペル(下襟)の幅に近いほど全体が整います。一般的なスーツなら、7〜8cm前後が標準です。細身のラペルには細めのネクタイを、幅広のラペルには太めのネクタイを合わせます。結び目の大きさは、襟の開きに合わせます。
| 襟の形 | 合う結び方 |
|---|---|
| レギュラーカラー | プレーンノット、セミウィンザー、ダブルノット |
| セミワイドカラー | セミウィンザー、ダブルノット |
| ワイドカラー・カッタウェイ | ウィンザー、セミウィンザー |
| ボタンダウン | プレーンノット |
シーン別|色と柄の選び方
| 柄 | 特徴 | 向いているシーン |
|---|---|---|
| ソリッド(無地) | いちばん品よく、どのスーツにも合う。シルクの光沢は夜に映える | 初デート、ディナー、ビジネス |
| レジメンタルストライプ | 斜めのストライプ。きちんと感と若々しさがある | ビジネス、昼のカフェ |
| 小紋 | 小さな柄が規則的に並ぶ。遠目には無地に近く、近くで見ると表情がある | 初デート、ディナー、ビジネス |
| ドット | 小さいドットは上品。大きいドットはカジュアル寄り | ディナー(小さめ)、昼のカフェ |
| ニットタイ | 編み地で立体感がある。剣先が水平にカットされたものが多い | 昼のカフェ、休日のジャケットスタイル |
| シーン | おすすめ | ポイント |
|---|---|---|
| 初デート | ネイビーの無地か小紋 | 主張を抑え、会話を主役にする。ネイビーは顔まわりを引き締め、失敗が少ない |
| ディナー | ダークトーンの無地、小さめのドット | 照明を落とした店では、シルクの光沢が上品に映える |
| 昼のカフェ | ニットタイ、明るめの小紋 | 日の光の下では軽い素材がなじむ。結び目はプレーンノットで小さく |
| ビジネス | ネイビー・グレーの無地、レジメンタル | 信頼感を優先。派手な色と大柄は避ける |
レジメンタルストライプは、イギリスでは連隊や学校を表す柄として使われてきた歴史があります。海外の方と会う場では、無地や小紋を選ぶと安心です。
色はスーツとシャツとの組み合わせで決めます。迷ったら「シャツより濃く、スーツより明るい」色を選ぶと、Vゾーンが自然にまとまります。
タイバーの位置と付け方
- 位置は、シャツの第3〜第4ボタンの間が目安です。ジャケットのボタンを留めたとき、Vゾーンの中に少し見える高さです。
- 大剣と小剣を、シャツの前立てごと挟みます。ネクタイだけを挟んでも、固定の役目を果たしません。
- 長さはネクタイの幅より短いものを選びます。幅の半分から4分の3程度が目安です。
- 床と水平に付けます。斜めになると、それだけで雑に見えます。
食事のとき、ネクタイが料理に触れない。かがんだとき、前に垂れない。タイバーは飾りである前に、相手の前で落ち着いてふるまうための道具です。
ほどき方と手入れ
- ほどくときは、結んだ手順を逆にたどります。小剣を一気に引き抜くと、生地と芯に負担がかかります。
- ほどいたら、ハンガーに吊るすか、軽く丸めて休ませます。結んだまま保管すると、しわが残ります。
- 毎日同じものを使わないようにします。1回締めたら2〜3日休ませると、しわが戻りやすくなります。
- しわが残ったら、当て布をしてスチームを浮かせて当てます。アイロンを押し付けると、生地がつぶれてテカります。
- シミは自分でこすらず、クリーニング店に相談します。食事の前にタイバーで留めておくのが、いちばんの予防です。
「今さら聞けない」は、今日で終わりにする
社会人になってから、誰にも聞けないまま自己流で結んできた。そういう方は少なくありません。恥ずかしいことではありません。今日から一つずつ覚えれば十分です。
練習は、出かける直前ではなく、時間のある夜に。鏡の前で5回結べば、手が順番を覚えます。焦らずに整えた首元は、向き合った相手にきちんと伝わります。
CROSS ROADは、会う時間の質に手を抜かないことを大切にしています。その考え方はCROSS ROADについてにまとめています。身だしなみとエスコートを仕事として磨きたい方は、キャスト募集もご覧ください。
よくある質問
Q. 最初に覚えるなら、どの結び方ですか?
プレーンノットです。手順が少なく、ほとんどの襟とネクタイに合います。慣れたら、改まった場に向けてセミウィンザーを覚えると、たいていの場面に対応できます。
Q. ディンプルがうまく入りません。
締めきってから作ろうとしていることが多いです。最後に大剣を通したら、締める前に指でくぼみを押さえ、小剣を引いて結び目を上げます。指を当てる位置は、結び目のすぐ下です。
Q. 大剣の長さが毎回変わってしまいます。
首にかける位置を固定します。「小剣の先がシャツの何番目のボタンに来るか」など、自分の目印を決めておくと毎回そろいます。
Q. ボタンダウンシャツにネクタイを締めてもいいですか?
締めてかまいません。ボタンダウンはカジュアル寄りの襟なので、プレーンノットで小さく結び、ニットタイやレジメンタルを合わせるとまとまります。式典など改まった場では、レギュラーカラーかワイドカラーを選びます。
Q. ネクタイは何本あればいいですか?
毎日同じものを使わないために、まず3本あると回せます。ネイビーの無地、小紋、場面に合わせた1本(ニットタイなど)から始めると、組み合わせに困りません。
まとめ
きれいな結び目は、丁寧さの証明です。
- 最初はプレーンノット。改まった場ではセミウィンザー。ワイドカラーにはウィンザー。
- ディンプルは、締める直前に指で1本。
- 長さは、大剣の先がバックルに少しかかる程度。小剣は見せない。
- 柄は場面で選ぶ。迷ったらネイビーの無地か小紋。
- ほどいて休ませ、毎日同じものを使わない。
首元を整えることは、相手との時間を大切にすることです。次の「紳士の手帖」二冊目では、スーツのサイズ感と所作を取り上げます。
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