スーツが似合う男になる|サイズ感・着こなし・所作の基本
Gentleman’s Notes紳士の手帖 二冊目スーツ
同じスーツを着ていても、似合う人と「着られている」人がいます。差を生むのは、値段やブランドではありません。サイズ感と、着たあとのふるまいです。
「紳士の手帖」二冊目は、スーツの基本です。肩、袖、着丈、パンツの丈。ボタンの留め方。靴とベルトと靴下。そして、スーツを着た男の所作。鏡の前で一つずつ確かめられるように、目安を数字でまとめました。
スーツは「サイズが9割」
スーツは、体に合っていて初めてきれいに見える服です。大きすぎると肩が落ちて頼りなく見えます。小さすぎると生地が引っ張られ、しわが出ます。どちらも、相手には「自分に合う服を知らない人」と映ります。
逆に言えば、サイズさえ合っていれば、手頃なスーツでも十分に品よく見えます。最初に確かめるのは、次の4か所です。
- 肩
- 袖丈
- 着丈
- パンツの丈
ジャケットのサイズ感
肩:いちばん直しにくい場所
ジャケットの肩先が、自分の肩の端にぴたりと合うのが正解です。肩パッドが肩より外にはみ出すと大きすぎ、腕の付け根にしわが寄ると小さすぎます。肩はお直しがほとんどできません。買うときは、まず肩で選びます。
- 腕を下ろしたとき、肩先にくぼみや段差ができない
- 腕を前に出しても、背中がつっぱりすぎない
- 後ろ襟がシャツの襟に沿い、浮いていない
首まわり:シャツの襟が少しのぞく
後ろから見て、ジャケットの襟の上にシャツの襟が1〜1.5cmほどのぞくのが目安です。シャツの襟が隠れていると、首が短く重たい印象になります。
袖丈:シャツの袖が1〜1.5cm見える
腕をまっすぐ下ろしたとき、ジャケットの袖口からシャツの袖が1〜1.5cmのぞく長さが基本です。ジャケットの袖は、手首の骨にかかるくらいで止まります。シャツが見えないと袖が長すぎ、3cm以上見えると短すぎます。袖丈はお直しで調整しやすい部分です。
着丈:お尻がほぼ隠れる長さ
ジャケットの裾が、お尻のふくらみをほぼ覆う長さが標準です。腕を下ろしたとき、裾が親指の付け根あたりに来るのが一つの目安です。短すぎると軽く、長すぎると脚が短く見えます。
胴回り:ボタンを留めてX字のしわが出ない
ボタンを留めたとき、ボタンを中心にX字のしわが出るなら小さすぎます。ボタンの位置で、手のひらが1枚入る程度のゆとりが目安です。
試着でやること
- 当日に履く靴と、普段のシャツで試着します。靴が変わると、パンツの丈の見え方も変わります。
- 腕を前に伸ばす、座る、かがむ。立っているだけでは、つっぱりやしわに気づけません。
- 正面だけでなく、横と後ろも鏡で確認します。背中のしわと、後ろ襟の浮きは自分では見落としがちです。
- スマートフォンや財布を入れる習慣があるなら、入れた状態で確認します。
パンツの丈と裾
パンツは腰骨のあたりで穿き、ベルトに頼らなくても落ちないウエストを選びます。そのうえで、丈を決めます。
| 丈の種類 | 裾の状態 | 印象 |
|---|---|---|
| ノークッション | 裾が靴の甲に触れない。たるみがない | すっきり、現代的。細身のパンツと相性がよい |
| ハーフクッション | 裾が靴の甲に軽く触れ、わずかにたわむ | いちばん標準的。迷ったらこれ |
| ワンクッション | 裾が靴の甲にしっかり乗り、たわみが1つできる | クラシックで落ち着いた印象 |
どの丈でも、裾の後ろが靴のかかとの付け根あたりにかかる程度に収めます。立ったときだけでなく、歩いたときに靴下が大きく見えないかも確認します。
ボタンのルール
| ジャケット | 立っているとき | 座るとき |
|---|---|---|
| 2つボタン | 上だけ留める。下は留めない | すべて外す |
| 3つボタン | 真ん中だけ(または上2つ)。一番下は留めない | すべて外す |
| 3つボタン段返り | 真ん中だけ留める | すべて外す |
| ダブル | 基本はすべて留める | 留めたままが基本 |
シングルのジャケットの一番下のボタンは留めない。これを「アンボタンマナー」と呼びます。留めると裾が引っ張られ、形が崩れます。
座るときにボタンを外すのは、生地のしわと型崩れを防ぐためです。立ち上がったら、歩き出す前に留め直します。この一連の動きが自然にできると、それだけで落ち着いた人に見えます。
Vゾーンを整える
ジャケットを着てボタンを留めたとき、胸元にできるV字の部分をVゾーンと呼びます。シャツの襟、ネクタイ、ラペルが集まる場所で、顔のすぐ下にあります。
- ネクタイの結び目が、襟の中心に収まっている
- ネクタイの幅とラペルの幅が近い
- シャツの襟先がジャケットの下に収まり、跳ねていない
- 色は「シャツより濃く、スーツより明るい」ネクタイでまとめる
ネクタイの結び方は、前回のネクタイの結び方講座で詳しくまとめています。
靴・ベルト・靴下
靴とベルトは色をそろえる
黒い靴には黒いベルト、茶色の靴には茶色のベルト。これが基本です。革の質感もそろえると、さらにまとまります。ベルトのバックルは、腕時計の金属の色(シルバーかゴールド)に合わせます。
| 靴 | 合わせやすい場面 |
|---|---|
| 黒の内羽根ストレートチップ | ビジネス、式典、改まったディナー。いちばんフォーマル |
| 黒・濃茶のプレーントゥ | ビジネス全般、ディナー |
| 茶のローファー | 昼のカフェ、休日のジャケットスタイル |
靴は手入れの状態まで見られます。かかとのすり減りと、つま先の傷は、会う前に確認します。
靴下はふくらはぎまでの長さ
座ったとき、パンツの裾から素肌が見えないこと。これが靴下の条件です。ふくらはぎまで届くロングホーズを選ぶと、脚を組んでもすねが見えません。色はパンツか靴に合わせ、ネイビー、チャコール、黒を基本にします。白い靴下とくるぶし丈は、スーツには合わせません。
シャツの選び方
スーツの印象は、中に着るシャツで大きく変わります。
- 首回りは、第1ボタンを留めて指1本が入る程度。きつすぎると襟がゆがみ、ゆるすぎるとネクタイの結び目の上に隙間ができます。
- 色は白か、淡いブルー(サックス)が基本です。どのスーツとネクタイにも合います。
- 肌着は、シャツから透けないものを選びます。白いシャツの下には、肌の色に近いベージュやライトグレーが透けにくい色です。首元から肌着がのぞかないよう、襟ぐりの深いVネックにします。
- ジャケットを脱ぐ場面を想定し、シャツにもアイロンをかけておきます。脱いだときに、しわだらけのシャツが出てくるのは避けたいところです。
出かける前のチェックリスト
- 肩先が浮いていない。後ろ襟からシャツの襟が少しのぞく
- シャツの袖が1〜1.5cm見える
- ジャケットのポケットに物を詰め込んでいない(形が崩れます)
- 袖口のブランドタグと、ベントやポケットを留めるしつけ糸を外してある
- ボタンは2つボタンなら上だけ
- パンツの折り目(センタープレス)が消えていない
- 靴とベルトの色がそろっている。靴が磨かれている
- 座っても素肌が見えない靴下を履いている
- ネクタイの長さは、大剣の先がバックルに少しかかる程度
しつけ糸と袖のタグは、買ったまま付いていることが多い部分です。外し忘れると、それだけで慣れていない印象になります。
スーツの手入れ
どれだけ体に合ったスーツでも、手入れをしなければ形は崩れます。
- 脱いだら、ポケットの中身をすべて出します。
- 肩に厚みのあるハンガーに掛けます。針金のハンガーでは、肩の形が崩れます。
- 洋服ブラシで、上から下へほこりを落とします。
- 1日着たら、2日は休ませます。生地のしわとにおいは、休ませることで抜けていきます。
- クリーニングに出しすぎないようにします。目安はシーズンに1〜2回。汚れたときは早めに出します。
スーツを着た男の所作
スーツは、着ているときの動きまで含めて完成します。そして、その所作の多くは、相手を大切にするエスコートとつながっています。
立ち姿
背筋を伸ばし、あごを軽く引いて立ちます。ポケットに手を入れたままにしない。腕を組まない。それだけで、相手に開かれた印象を与えます。待ち合わせで相手を待つときも、スマートフォンを見続けるより、顔を上げて相手を見つけられる姿勢でいるほうが、出会った瞬間がきれいです。
座り方
- 椅子の前で、ジャケットのボタンを外します。
- パンツのひざ上を軽くつまみ上げてから腰を下ろします。ひざの生地が伸びるのを防げます。
- 背もたれに寄りかかりすぎず、背筋を伸ばして座ります。
- 脚は大きく開かず、組むなら相手に靴底を向けないようにします。
お店では、相手が座るのを見届けてから座ります。椅子を引ける席なら、相手の椅子を軽く引いて座りやすくします。
ドアを開ける
手前に引くドアは、開けて押さえ、相手を先に通します。奥へ押すドアは、自分が先に入り、内側から押さえて相手を通します。どちらの場合も、相手が通り過ぎるまで手を離しません。エレベーターでは「開」ボタンを押さえ、相手を先に乗り降りさせます。
歩く速さを合わせる
スーツの男は、つい自分の歩幅で歩きがちです。相手の靴を見てください。ヒールやパンプスなら、普段の半分くらいの歩幅を意識します。並んで歩くときは車道側に立ちます。階段では、上りは相手の少し後ろ、下りは少し前を歩くと、万一のときに支えられます。
速く歩けることより、相手が息を切らさないこと。会話が途切れない速さが、ちょうどいい速さです。
「着られている」と感じている方へ
スーツを着ると、自分だけが浮いている気がする。肩に力が入り、どう動けばいいかわからない。そう感じる方は少なくありません。
原因の多くは、体に合っていないことと、慣れていないことです。サイズを合わせ、休日に一度スーツで出かけてみる。それだけで、服が体になじんでいきます。似合う男は、生まれつきではなく、準備と回数でつくられます。
CROSS ROADは、スーツを軸に始まったブランドです。身だしなみとエスコートを磨き、人と向き合う仕事に挑戦したい方はキャスト募集をご覧ください。
よくある質問
Q. 既製品のスーツでも大丈夫ですか?
大丈夫です。肩が合うものを選び、袖丈とパンツの丈をお直しすれば、十分に体に合います。肩はお直しが難しいので、試着で最優先に確認します。
Q. パンツの丈は、どれを選べばいいですか?
迷ったらハーフクッションです。細身のパンツですっきり見せたいならノークッション、落ち着いた印象にしたいならワンクッションを選びます。
Q. 座るとき、本当にボタンを外すのですか?
シングルのジャケットは外します。留めたまま座ると、生地が引っ張られてしわが寄り、型崩れの原因になります。立ち上がったら留め直します。
Q. 茶色の靴をスーツに合わせてもいいですか?
合わせてかまいません。ネイビーやグレーのスーツには、茶色の靴がよく合います。ただし式典や改まった場では、黒の靴を選びます。ベルトの色を靴にそろえることを忘れずに。
Q. スーツは何着あればいいですか?
1日着たら2日休ませるため、3着あると無理なく回せます。最初の1着はネイビーの無地、次にチャコールグレーを選ぶと、ほとんどの場面に対応できます。
まとめ
- スーツはまず肩で選ぶ。袖とパンツの丈はお直しで合わせる
- シャツの袖は1〜1.5cm、後ろ襟からシャツの襟も少し見せる
- 2つボタンは上だけ。座るときは外し、立ったら留める
- 靴とベルトは色をそろえ、靴下は座っても肌が見えない長さ
- 座る、ドアを開ける、歩く。所作はすべて相手のためにある
サイズを合わせ、所作を整える。その積み重ねが、品のある男をつくります。次の「紳士の手帖」三冊目では、会う前日と当日の身だしなみを取り上げます。
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